
「リスティング広告を始めたいが、月にいくら用意すればよいのか分からない」。広告を検討するとき、最初に整理したいのが予算です。
先に結論をお伝えします。業種別の平均値を調べるだけでは、自社の予算は決まりません。必要なのは次の4つを順番に確認することです。
- 費用の内訳
- 自社の条件で予測したクリック単価
- 有効な問い合わせが何件取れるか
- 受注したときに採算が合うか
この記事では、海外の業種別クリック単価を参考値として紹介します。そのうえで、国内で自社の単価を調べる方法、月予算ごとの比較、受注から逆算した予算の考え方を順に説明します。
なお、広告費と受注は別物です。広告費を払っても、受注が約束されるわけではありません。この前提で読み進めてください。
リスティング広告の費用は何で決まるのか
クリック課金の仕組み
リスティング広告は、検索結果に表示される広告です。多くはクリック課金で、広告が表示されただけでは費用はかからず、クリックされたときに費用が発生します(Google広告ヘルプ:クリック単価制)。
1回のクリックにかかる費用を「CPC(クリック単価)」と呼びます。予算づくりでは、設定する「入札額」と実際に支払った平均CPCを区別します。実際の単価は競合状況などで変わるためです。
広告費の基本の式は次のとおりです。
広告費 = CPC × クリック数
外注した場合の費用内訳
自社で運用せず代理店などに任せる場合、支払う費用は広告費だけではありません。一般的には次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 費用の種類 | 内容 |
|---|---|
| 媒体費 | Googleなどの広告媒体に支払う広告費そのもの |
| 運用代行費 | 広告の設定・調整・報告などを任せる費用 |
| 初期設定・計測 | アカウント作成や問い合わせ計測の設定費用 |
| LP制作・改善 | 広告から案内するページの制作や修正費用 |
料金の決め方は会社によって異なります。公開例の一つとして、LiNK WiNは運用手数料を原則として広告費の20%、下限10万円としています。少額案件などは別方式も相談可能で、制作費は別途です(LiNK WiN:料金)。
これは一社の公開例であり、全国的な相場ではありません。料率が低いかどうかだけで「安い」と判断せず、何が含まれ、何が別料金かを必ず確認してください。
業種別クリック単価の参考値と国内での調べ方
海外の業種別CPC(参考値)
業種ごとの単価の傾向を知る手がかりとして、海外の調査を紹介します。
| 業種 | CPC(USD) |
|---|---|
| 飲食 | 2.05 |
| 旅行 | 2.14 |
| 不動産 | 3.22 |
| 美容・パーソナルケア | 4.62 |
| 教育・レッスン | 4.81 |
| 法人サービス | 5.87 |
| 住宅・リフォーム | 8.33 |
| 弁護士・法律サービス | 9.87 |
出典:WordStream/LocaliQの2026年調査(2026 Google Ads Benchmarks)。米国の検索広告13,474キャンペーンを対象に、2025年4月1日〜2026年3月31日のデータを集計したもので、Google広告とMicrosoft広告を含みます。表の値は原資料で「平均」と表記されていますが、中身は中央値です。単位は米ドルで、日本の相場ではありません。
この表から読み取れるのは「業種によって単価に数倍の差がある」という傾向です。この調査では住宅・リフォームや法律サービスが高い値ですが、日本でも同じ順番や差になるとは限りません。
ただし、この数値を円に換算して日本の相場とみなすのは避けてください。国も市場も競合も異なるためです。
国内で自社のCPCを調べる方法
国内の業種別相場について、今回は信頼できる代表的な統計を確認できませんでした。そこで現実的なのが、Googleの「キーワードプランナー」で自社の条件に合わせて予測する方法です。
キーワードプランナーでは、検索語ごとに費用・クリック数・平均CPCの予測を確認できます(Google広告ヘルプ:キーワードプランナー)。使うときのポイントは次のとおりです。
- 商品・サービス、検索語、地域、言語、ネットワーク、期間を実際の配信予定にそろえる
- 配信を始めたら、予測ではなく実績の数値で計算し直す
- 予測は成果を保証するものではないと理解しておく
基本機能を使うには、支払い情報を含むGoogle広告アカウントの設定が必要です(Google広告ヘルプ:キーワードプランナーの使い方)。
また、画面に出る「ページ上部掲載の入札単価」は、平均CPCとは別の指標です。掲載位置に関する入札単価の値を、そのまま自社の平均CPCとして計算に使わないようにしましょう。
月予算ごとに何が変わるか
仮定条件での比較
ここからは仮定の数値で計算します。以下は相場でも実績でもなく、成果を保証するものでもありません。
- 平均CPC:300円
- CVR:2%
CVR(コンバージョン率)は、広告のクリックに対して成果がどれくらい発生したかを見る割合です。この記事では「有効な問い合わせ数 ÷ クリック数」と定義します。営業電話やいたずらなど、商談につながらない問い合わせは含めません。
| 月の広告費 | クリック数 | 有効問い合わせ(期待値) |
|---|---|---|
| 3万円 | 100回 | 2件 |
| 10万円 | 約333回 | 約6.7件 |
| 30万円 | 1,000回 | 20件 |
1件の有効問い合わせにかかる費用を「CPA(獲得単価)」と呼びます。
CPA = 広告費 ÷ 有効問い合わせ数
表の小数は計算上の期待値です。実際に約6〜7件を獲得できるという約束ではなく、少ないクリック数では問い合わせが0件になることもあります。少額で試すなら商品・地域・検索語を絞り、何を確かめたいかを決めておきましょう。
この仮定では、どの予算でもCPAは広告費のみで15,000円です。
ただし実際には、予算を増やしても同じ割合で成果が増えるとは限りません。増額すると、これまで表示されにくかった検索語やCPCの高い枠にも配信が広がり、単価やCVRが変わることがあるからです。
日予算と月の請求上限
Google広告では、予算を「日平均予算」で設定します。ほとんどのキャンペーンでは、1日の上限は日平均予算の2倍、1か月の上限は30.4倍です(Google広告ヘルプ:予算について)。
たとえば日平均予算3,000円を変えずに1か月配信した場合、月の上限の目安は3,000円×30.4=91,200円です。1日の消化は最大6,000円になる日もあり、毎日同じ額が使われるわけではありません。
月の途中で予算を変更した場合や、キャンペーンの種類によっては例外があります。また、複数のキャンペーンを動かすときは、それぞれの上限の合計も確認しておきましょう。
外注時の総費用の見方
外注する場合は、広告費とは別に総費用を確認します。以下は実在の会社とは関係のない仮定例です。
- 広告費:10万円
- 月額代行費:3万円
- 合計:13万円(税・初期費用・制作費は別途確認)
前述のLiNK WiNの下限額とは別の、単純な計算例として見てください。
許容CPAから予算を逆算する
受注1件で広告に回せる額から考える
予算の採算を考える一つの方法は、受注から逆算することです。ここでも仮定の数値を使います。
- 1件受注したときに広告費へ回せる額:30,000円
- 問い合わせから受注に至る割合(受注率):20%
30,000円は、原価や提供にかかる手間、残したい利益を差し引いたうえで決めた額とします。
すると、有効問い合わせ1件にかけてよい費用(許容CPA)は次のとおりです。
30,000円 × 20% = 6,000円
さらにCVRが2%なら、採算設計上の平均CPCの目安は次のようになります。
6,000円 × 2% = 120円
この120円は、採算を考えるための目安です。広告管理画面で設定する入札上限額そのものではない点に注意してください。
採算が合わないときの考え方
先ほどの仮定(CPC300円・CVR2%)ではCPAが15,000円でした。許容CPAの6,000円を大きく上回っており、採算が合いません。
単価と比率が変わらないまま予算を増やせば、採算の差も大きくなります。見直すべきは次のような点です。
- 検索語を絞り、受注につながりやすい語に集中する
- 広告の案内先ページを改善してCVRを上げる
- 問い合わせ後の対応を見直して受注率を上げる
採算を比べるときは、費用の範囲もそろえます。先ほどの30,000円が運用代行費などを確保したあとの「媒体費に使える額」なら、比べるのは媒体費だけのCPAです。運用代行費や制作費まで含む獲得費用で評価するなら、許容額もその合計に使える枠で計算します。支払った代行費や制作費を総支出から除くという意味ではありません。同じ費用を二重に控除せず、許容額と実績を同じ範囲で比べましょう。
案内先ページの改善については、こちらで詳しく解説しています。
開始前・増額前に確認すること
開始前のチェック
- 有効問い合わせの定義を決めたか
- 問い合わせを計測する設定ができているか
- 許容CPAを計算したか
- キーワードプランナーで自社条件の予測を確認したか
- 外注する場合、費用内訳と別料金の範囲を把握したか
増額前のチェック
- 実績のCPC・CVR・CPAで計算し直したか
- 有効問い合わせのうち、受注に至った割合を確認したか
- 許容CPAの範囲内に収まっているか
- 複数キャンペーンの月上限の合計を把握しているか
計測ができていないまま始めると、広告が成果に結びついたかどうか判断できません。予算の話より先に、数字を正しく取れる状態を作ることが大切です。
よくある質問
月いくらから始められますか?
一律に「いくらから」とは言えません。自社のCPC予測と、判断に必要なクリック数から決めるのが基本です。たとえば仮定のCPC300円で100回のクリックを集めるなら3万円が必要、という形で計算します。少額すぎると問い合わせが少なく、成果の良し悪しを判断しにくくなる点も考慮しましょう。
国内の業種別相場は分かりませんか?
今回、根拠として示せる国内の代表的な統計は確認できませんでした。そのため、自社の商品・地域・検索語でキーワードプランナーの予測を取り、配信後は実績で更新する方法をおすすめします。海外の業種別データは傾向をつかむ参考に留めてください。
代理店に任せると費用はいくらかかりますか?
会社ごとに料金体系が異なるため、媒体費・運用代行費・初期設定や計測・LP制作の4つに分けて見積もりを確認してください。料率の高低だけでなく、どこまでが料金に含まれ、何が別料金かを比べることが重要です。
予算を増やせば問い合わせも比例して増えますか?
比例して増えるとは限りません。増額すると配信先が広がり、CPCやCVRが変わることがあります。まず許容CPAの範囲で成果が出ているかを確認し、そのうえで段階的に増やすのが安全です。
まとめ
リスティング広告の費用は、業種別の平均値だけでは決まりません。ポイントを振り返ります。
- 海外の業種別CPCは傾向を知る参考値で、日本の相場ではない
- 国内ではキーワードプランナーで自社条件のCPCを予測し、実績で更新する
- 広告費=CPC×クリック数、CPA=広告費÷有効問い合わせ数
- 受注1件で回せる額と受注率から許容CPAを出し、予算を逆算する
- 採算が合わないときは、増額ではなくCVRや受注率の改善を先に考える
- 外注する場合は費用内訳を分けて総費用を確認する
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リクマ
海外の表は「業種間でどれくらい差が出るか」を知る参考に留め、国内の順位や金額は自社の条件で調べ直す、という使い分けが現実的だと考えます。