
「お知らせは更新しているのに、利用相談につながらない」「ケアマネジャーへ案内を渡しても、その後の反応が分からない」。介護事業所の広報では、何をどこまで発信すればよいか迷うことがあります。
まず整えたいのは、どんな相談に対応できるか、情報はいつ確認したものか、誰に連絡すればよいかの3点です。事業所の雰囲気に加えて、紹介を検討する人が判断できる材料を届けましょう。
この記事では、訪問介護・通所介護などのサービス提供事業所を中心に、ケアマネジャーや地域の関係者へ伝える内容と、少人数でも続けやすい運用を整理します。紹介件数を保証する方法ではなく、必要な支援と事業所の対応範囲を結びつけるための広報の提案です。
介護事業所の広報は「相談してよいか」を伝えることから
行事の写真やスタッフ紹介は、事業所を知るきっかけになります。ただ、それだけでは「この地域の、こうした支援について相談できるか」が分かりません。発信内容を考えるときは、受け取る相手の次の行動から逆算します。
ケアマネジャーには、提供サービス、対応地域、受入条件、連絡方法。利用者・家族には、支援の内容、利用までの流れ、費用を相談する窓口。地域の関係者には、事業所の役割と、どのような相談を受け付けるか。共通の案内を使う場合も、最初に見せる情報を変えると整理しやすくなります。
広報の目的は、事業所の都合だけで紹介を集めることではありません。本人の意向や必要な支援に合うかを検討できるよう、できることと難しいことの両方を伝えるのが基本です。
厚生労働省の介護サービス情報公表制度も、利用者が事業所を比較・検討して選ぶための情報を提供しています。自社の案内を整える際は、公表情報との食い違いにも目を向けましょう。
ケアマネ向けには、受入条件・確認日・相談窓口をそろえる
最初の案内に載せたい6項目
立派なパンフレットを作る前に、次の項目が一か所で分かるか確認します。
- サービス種別と事業所名:訪問介護、通所介護など、どの事業所の案内か。
- 対応地域:訪問・送迎できる範囲と、個別相談が必要な地域。
- 曜日・時間帯:営業日時と、実際に受入相談ができる時間帯。
- 対応できる支援と条件:人員や設備を踏まえた対応範囲、事前に確認したい事項。
- 情報の確認日:受入状況を最後に確かめた日付。
- 相談窓口:担当部署、連絡先、受付時間、不在時の連絡方法。
訪問介護では地域や移動時間、曜日、支援内容の組み合わせによって受入可否が変わります。通所介護では利用希望日や送迎範囲、必要な支援なども確認が必要です。併設サービスがあっても、一つの「空きあり」でまとめないようにします。
「空きあり」を、条件付きの相談案内に変える
次は、書き方を示すための架空の訪問介護事業所の例です。実在する事業所の受入状況ではありません。
受入相談のご案内(2026年9月25日確認)
訪問介護:通常の実施地域のうち北部エリアで、火曜・木曜の午後の訪問について相談を受け付けています。支援内容・移動時間・職員体制を確認したうえで、個別に回答します。受入を確約するものではありません。相談窓口はサービス提供責任者、受付は平日9〜17時です。連絡方法は事業所案内をご確認ください。
実際の掲載時には、自事業所の地域名と運用に置き換え、案内のそばに連絡先を置きます。「何でも対応」「即日利用可能」など、確認前に確約する表現は避けましょう。
細かな空き状況を更新し続けられない場合は、古い表を残すより「現在の受入状況は窓口へご確認ください」とする方法があります。その場合も、対応地域や通常のサービス内容は分かるようにしておきます。
ホームページ・紙の案内・SNSは役割を分ける
媒体を増やすほど、そのまま広報が強くなるわけではありません。情報が違ってしまわないよう、まず最新版の置き場所を決めます。以下は、小規模事業所での運用例です。
| 媒体 | 主な役割 | 運用で気をつけること |
|---|---|---|
| ホームページ | 対応範囲と相談窓口の最新版を確認する | 更新日を表示し、スマホでも連絡先へ進めるようにする |
| A4の事業所案内 | 訪問先や面談時に要点を短く伝える | 発行日と最新版への案内を載せ、古い資料を差し替える |
| SNS | 活動や考え方を知るきっかけを作る | 受入相談は所定の窓口へ案内し、過去投稿を現状と誤解させない |
A4案内は、事業所名とサービス種別、対応地域、相談できる内容、窓口を上から順にまとめます。紙面にすべてを詰めるより、詳しい情報を確認するページのURLやQRコードを添える構成が考えられます。読み取り後にトップページを探し回らなくてよいよう、対応する案内ページへつなげます。
SNSに受入状況を載せるなら、確認日と最新情報への案内も付けます。枠が埋まったときはホームページを直すだけでなく、現在も見られる投稿や固定表示の扱いを確認してください。
ホームページ全体の構成や、利用者・ケアマネジャー・求職者の入口の分け方は、関連記事で詳しく整理しています。
地域連携では「相手が必要な変化」を届ける
まずは届け方と頻度を確認する
居宅介護支援事業所などへ案内する際は、「メール、紙、電話のどれが確認しやすいか」「どんな変更があれば知りたいか」を聞くところから始められます。一律の頻度で大量に送るより、相手の業務に合う届け方を決めましょう。
伝える内容は、受入相談ができる曜日の変更、送迎範囲の見直し、窓口の変更など、紹介の判断に関係する変化が中心です。前回から何が変わったかを冒頭に一文で示すと、読む目的が分かります。
「今月のお知らせです」だけで始めず、「受入相談の対象となる曜日が変わりました」と要点から伝える。添付資料を開かなくても、変更点と連絡先を本文で確認できるようにする。この程度の工夫から始めて構いません。
活動報告は、相談や連携に役立つ内容へ
研修や地域活動の報告も、開催した事実だけで終わらせず、何を学び、今後どのような対応に生かすかを実態の範囲で説明します。連携先から繰り返し尋ねられることがあれば、個別事例を出さずに「相談前によくある質問」としてまとめる方法もあります。
地域包括支援センターなどの公的な相談窓口を、自事業所への紹介を増やすためだけの相手として扱わないことも大切です。地域での役割や必要とされる情報を確認し、本人の選択や相談支援を妨げない形で関わります。地域の会合で資料を配布する場合も、主催者のルールに沿って行いましょう。
相談を受けた後は、受入の可否だけでなく、まだ確認が必要な点や、いつ回答できそうかを伝えます。広報担当が「すぐに返答します」と掲げても現場で守れなければ困るため、実際に対応できる連絡の流れを案内に反映します。
写真・事例の掲載は、同意と公開範囲を確かめる
個人情報保護委員会は、個人を識別できる利用者の写真をホームページや機関誌などで第三者に見せる際には、本人の同意が必要としています。利用者の写真掲載に関するQ4-15
以下は、掲載判断を整理するための運用上のチェック項目です。個別の同意手続きや判断は、事業所の規程と最新の関係ガイダンスに沿って確認してください。
- ホームページ、SNS、紙の広報物など、使う媒体と目的を説明できているか。
- 今回の使い方が、確認した同意の範囲に入っているか。
- 背景の名札、記録用紙、掲示物、住所などが写っていないか。
- 公開後に掲載の取り下げを相談されたとき、誰が対応するか。
顔を隠しても、背景や文章との組み合わせで本人が分かる場合があります。家族から了承を得たという理由だけで、本人の意思確認や必要な手続きまで済んだと扱わないようにしましょう。
また、支援事例は名前だけを変えれば安全とは限りません。珍しい状況、地域、時期、家族構成を組み合わせると特定につながるため、広報に必要のない具体情報は載せない判断が必要です。利用者写真を使わず、設備や教材、個人情報のない事業所内の様子で伝える方法もあります。
公開コメント欄やSNSのメッセージに、利用者の病歴や生活状況を送ってもらう案内は避けます。最初の問い合わせでは連絡に必要な情報に絞り、詳しい内容は事業所が定めた手段で確認しましょう。
少人数で続けるなら、更新担当と確認の順番を決める
変更時の更新と、定期点検を分ける
最初から毎週ブログを書く計画にしなくても大丈夫です。まずは、受入状況や連絡先が変わったときに案内へ反映できる状態を作ります。
- 現場の担当者が、変更点と確認日をまとめる。
- 管理者などの確認担当が、掲載してよい内容かを確かめる。
- 更新担当がホームページや案内資料へ反映する。
- 必要な連携先へ、希望された方法で変更点を知らせる。
担当は兼任でも構いません。不在時に止まらないよう、代わりに確認する人や、更新が難しい場合の相談先も決めておきます。
加えて月1回、古い受入表示、資料の日付、電話番号、リンク、写真の掲載範囲を見直す時間を設けると整理しやすくなります。月1回は運用例であり、法定の更新頻度ではありません。変更があった重要な情報は、定期点検の日まで待たずに対応します。
相談件数と、利用開始は分けて振り返る
反応を見るときは、投稿数や「いいね」の数だけで終わらせず、相談時に「何を見て連絡したか」を無理のない範囲で聞き取ります。紹介元と、見た媒体は別の項目にすると、ケアマネから紹介されてホームページを確認した相談も整理できます。
そのうえで、相談件数、対応可能だった件数、利用開始に進んだ件数を分けます。同じ相談の再連絡を新規件数に含めないなど、集計のルールもそろえましょう。電話ボタンのクリックは、通話や利用開始が成立した証拠ではありません。
対応できなかった理由が地域や時間帯に偏るなら、案内を具体化する余地があります。人員体制が理由なら、発信量だけで解決しようとせず運営側の課題として検討します。分析用の表には個人名や詳しい健康情報を持ち込まず、アクセス解析のURLやイベント名にも入れません。
よくある質問
SNSは毎日更新したほうがよいですか?
毎日更新を前提にする必要はありません。まず対応範囲と相談窓口を整え、重要な変更を反映できる運用を優先します。そのうえで、活動や考え方を伝える投稿を、現場が継続できる頻度で検討しましょう。
空き状況を公開できない場合は、何を載せればよいですか?
サービス種別、通常の対応地域、相談できる内容、連絡先と受付時間を載せます。受入可否は個別確認であることを示し、問い合わせ後の確認の流れを案内すれば、細かな枠を公開しなくても相談の入口を作れます。
ホームページを作り直さないと、広報は改善できませんか?
既存ページの受入情報や連絡先、案内資料との不一致を直すことから始められます。更新できない、スマホで情報が読めない、複数事業所の情報が混ざる場合は、構成や管理方法も見直す理由になります。
まずは事業所案内の1ページから見直そう
介護事業所の情報発信は、対応条件・確認日・窓口をそろえるところから始められます。次に、最新版の置き場所、連携先への届け方、更新の担当を決めましょう。発信量を増やす前に、今の情報で相談できるかを点検するのが第一歩です。
ホームページの情報整理を考える際は、Nutritsの居宅介護支援業の制作・改善事例も参考にしてください。今回中心に扱った訪問介護・通所介護とは事業の役割が異なり、紹介件数増加を実証する事例ではありません。相談前の案内を考える参考としてご覧ください。
自事業所で何を優先すればよいか迷ったら、現在のホームページと「誰から、どんな相談を受けたいか」を添えて、Nutritsへお問い合わせください。広報用の相談資料に、利用者の個人情報を入れる必要はありません。



リクマ
細かな空き枠を載せるなら、更新する人とタイミングもセットで決めたいです。維持できる情報の細かさに合わせるほうが、相談する側の迷いを減らせます。